万能基板での工作について〜1

●万能基板って何よ?
 ・専用基板と万能基板
   電子部品を幾つか使って回路を組み立てようとすると、どうしても基板と呼ばれる電気を通さない板の上に組み立てる必要が出てきます。
   電子機器の中では、厚さ1.6mm程(もちろんもっと薄い場合も厚い場合もあります)の絶縁物の板に銅箔を貼り付けて
   それを薬品で溶かして配線のパターンを作り、部品をはんだ付けすると、配線もできるような基板を使っています。
   電子工作キットでも、多くの場合はんだ付けすれば基板の上の配線は完了するような基板を使っています。
   ただし、この様な基板では、予め決められた回路以外の回路を作ろうとしてもムリで、その回路「専用」となってしまいます。
   「専用基板」ですね。
   専用基板を使えば、工作はとても楽ですし失敗も少なくなります。
   ところが、趣味の電子工作では、同じ回路を何個も作るわけではありませんので、作りたい回路があるたびに
   基板の上の配線を設計して→基板にそのパターンを描いて(あるいはフォトレジスト用のフィルムを作って)
     →薬品で不要な銅箔を溶かして取り除いて→所定の位置に穴をあけて→磨いてフラックスなどで仕上げて
   なんてことをする訳にもいきません。
   また自分で設計した回路の場合、最初から専用基板を作ってしまうと、設計を修正したい場合など最初からやり直しとなってしまいます。
   そこで、趣味の工作では「万能基板」を使う機会が多くなります。
   ※万能基板はユニバーサル基板とか、蛇の目基板と呼ばれることもあります。どれも同じものを指します。
   
   写真4 万能基板と専用基板


●材質について
   万能基板に使われる絶縁物の板の材質には
   ●紙フェノール(紙にフェノール樹脂を染み込ませて圧縮成形したもの)
      安価で切ったり穴を空けたりしやすいが、割れやすい。高周波特性や絶縁特性がやや劣る。(といっても大抵の場合十分な性能です)
   
   写真5 紙フェノール基板


   ●紙エポキシ(紙にエポキシ樹脂を染み込ませて圧縮成形したもの)
      紙フェノールとガラスエポキシの中間くらいなのですが、最近はあまり見かけなくなりました。
   
   写真6 紙エポキシ基板


   ●ガラスエポキシ(ガラス繊維の布にエポキシ樹脂を染み込ませて圧縮成形したもの)
      高周波特性や絶縁特性が良く見栄えも良いけれど、高価で、硬いので切ったり穴を空けたりの加工が難しい。
   
   写真7 ガラスエポキシ基板

   ●ガラスコンポジット(ガラス繊維の不織布にエポキシ樹脂を染み込ませて圧縮成形したもの)
      高周波特性や絶縁特性も良く、ガラスエポキシよりは安価で加工もしやすい。

   などがあります。このうち「紙エポキシ」はメーカーも作らなくなってしまったらしくて、あまり見かけなくなってしまいました。

●厚さや大きさ
   厚さはどの材質でも1.6mmが一般的ですが、0.8mmなどの薄いものもあります。
   大きさは1cm四方から数十cm四方までありますが、47×72mmやその倍の72×95mmの物が一般的です。

   
   写真8 いろいろなサイズの万能基板

●穴とランド
   万能基板には沢山の「穴」があいています。4隅の大きな(直径3mm程)の穴は、ケースなどにネジ止めするときのものです。
   内側に沢山あいている穴(直径0.8〜1mm程)は部品のリード線を通すためのもので、裏側の銅箔にはんだ付けします。
   (表裏の両面に銅箔が付いている基板もあります)
   この銅箔の部分を「ランド」と呼びます。
   穴と穴の間隔は、2.54mmが一般的です。何故に半端な数字かといえば、インチが基本となっているからで
   2.54mm=1/10インチ、というわけです。
   私が工作を始めた1970年代には、穴の間隔が4mmの基板のほうが一般的でした。
   その後DIPパッケージのICが普通に使われるようになり、「どうやってこんな狭い間隔で工作するの?」などの声も上がりつつも
   2.54mm間隔が普通になっていったように記憶しています。
   さらに細かいものでは1.778mmや1.27mm間隔のものもあります。
   また、一定間隔に穴が開いているのではなく、工作や実験をしやすいように工夫された穴や銅箔パターンの基板もあります。
   ランドは、一つの穴に一つの丸い銅箔が付いているのが基本形(?)ですが、
   電源の配線などに便利なように、幾つかのランドを繋げている基板もあります。
   最初はヤヤコシイと思うかもしれませんが、工作の経験を積むうちに「どの基板が使いやすいかな?」と選ぶ楽しみも出てくると思います。

   
   写真9 万能基板の銅箔面


●おまけ
   表面実装部品(チップ部品)用の、穴が開いていない「万能基板」もあります。
   昔、DipパッケージのICが出回り始めた頃は2.54mm間隔の穴でもえらく狭く感じましたが、直ぐに一般的になってしまいました。
   案外10年くらい先には、穴が開いている万能基板のほうがむしろ珍しくなっているかもしれませんね。

   
   写真10 表面実装部品(チップ部品)用の万能基板



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