万能基板での工作について〜3

●基板をカットする
さて、部品の配置も決まり必要な基板サイズも分かったら、万能基板を必要な大きさにカットします。
もちろん、最初から「ジャストサイズ」の基板があれば、切るなんていう面倒でちょっと危険な作業は必要ないのですが
適当なサイズがあるとは限りません。今回作ってみるような、ごく簡単な回路の場合、基板は小さなもので良いのですが
あまり小さなサイズの基板は一般的ではありません。大きめの基板にゆったり作るのも良いのですが、貧乏性の私には
ちょっともったいなく感じてしまいます。
なので、小さな基板サイズで十分な場合、まずは万能基板をカットすることから工作が始まることとなります。

●必要な工具
万能基板は、爪先でコツコツ叩いてみれば感じられるように、意外と硬い素材でできています。
ボール紙をナイフで切るようには切れませんので、少しだけ気合を入れて、気合の入った工具(?)で切ることとなります。
まず必要なのは、プラスチックカッターです。


普通のナイフとは違い、引っ掛ける鉤爪のような刃が付いています。この「鉤爪」の部分でプラスチック板など固めの素材の表面を引っかいて
キズをつけることでミゾを彫る工具です。
もう一つ欠かせないのが、定規です。普段ちょっとした図を書く時に使うようなプラスチックの定規は使わないほうが良いです。
金属製の、できれば少し厚めのしっかりした定規が使いやすいです。



●切ってみよう
平らでキズをつけてしまっても良い台の上に基板を置き、定規を当ててプラスチックカッターで切るのですが、
一回引いてみても紙のようにスパッと切れるわけではありません。
少しずつキズを付ける事を何回も繰り返して、基板の厚さの1/4〜1/3位の深さのミゾを彫ります。
裏側にも同様にミゾを彫ります。



ミゾを彫ったら、ミゾのところでパキッ!と割り折ります。机の角などを利用すると割りやすいのですが
ミゾが深く彫れていない場合にはついつい力が入りすぎて、ヘンなところから割れてしまいがちです。
一辺がカットできたら、次の辺も同様にカットし・・・を続けて、必要な大きさに切ります。



基板の用意ができたら、いよいよはんだ付けですね!


●はんだ付け
はんだ付けは何のため?かと言えば、部品を配線するために行います。
「はんだを付けたのに動かないぞ!お前の売ったものは壊れている!」と怒られる事がたまにあるのですが
どんなはんだ付けをしたのかな?と見てみると、部品のリード線にはんだは付いているのですが、部品のリード線と基板とか
全くつながっていない・・・なんて事があります。(ネタならば良いのですが、紛れも無い実話です)
部品がちゃんと働けるように、ゆっくり正確に配線しましょう。


●必要な工具
はんだ付けと言っても、欲ばれば欲しい工具も沢山出てきますが、最初から全てそろえるのはムリですから
必要最低限の工具で進めます。
工作を続けるうちに、いろいろと欲しい工具も出てくると思いますが、都度買い足すと良いと思います。

・はんだごて
「はんだ」と言う200度前後の割と低い温度ででとける合金をとかすための工具です。
電熱線のヒーターの先に、腐食しにくい材質のこて先が付いていて、この部分ではんだをとかします。
電子工作用としては20Wか30Wで先の細いものが良いです。(パッケージに電子工作用と書いてあります)
ヒーターにはニクロム線のタイプ(1000円位から)とセラミックヒーターのタイプ(2000円位から)がありますが
予算が許せばセラミックヒータータイプを買うと良いと思います。



・こて台
はんだごては300度くらいまで熱くなりますので、直に机などに置くと焦がしてしまったり最悪火事になってしまいます。
こてを手に持っていないときに置くための台です。
多くの市販のこて台にはスポンジもついていますが、使い方は後ほど説明します。
簡単なものですから、板金工作で自作しても良いでしょう。


・はんだ
はんだには板金用の延棒みたいなものから、精密工作用の直径0.3mm程の極細のものまでさまざまありますが
電子工作用には、板金用と書いてあるものは使わないでください。
このコーナーの工作には、電子工作用の、直径0.8mmか0.6mmの針金のようなものが良いです。
また、従来のはんだは鉛とスズの合金でしたが、最近は鉛を嫌い鉛を使っていない「鉛フリー」(またはPbフリーとか無鉛とか)の
はんだも一般的になりました。確かに環境や体のためには良いのですが、使ってみるとはんだ付けのしやすさに難があります。
どうしても鉛を使いたくない人は鉛フリータイプを使用するしかありませんが
初心者の場合、鉛を使った従来型のはんだで練習して、問題なくはんだ付けできるようになってから鉛フリーはんだを使う方が良いと
私は思います。



・はんだ吸取線
間違ったところにはんだ付けしてしまったときに、はんだを吸取って部品を外すためのものです。


・ラジオペンチ
部品のリード線をつまんだり曲げたりする時に使います。
最近は100均ショップでも見かけますが、予算があれば1000円以上のものを工具屋さんで買うと良いと思います。


・ニッパ
部品のリード線など細い金属線を切るための工具です。
こちらも100均ショップでも見かけますが、できれば良いものを買ったほうが気持ちよく工作できます。
いろいろな大きさのものがありますが、小型のものが使いやすいでしょう。


・ルーペ
電子工作は細かな作業が多いので、あると何かと役に立ちます。


・ゴーグル
部品のリード線はとがっていますし、はんだごては高温になります。万一目を怪我してしまっては大変です。
必ずゴーグルを装着して工作しましょう。



●はんだ付け作業
※注意して!!※
 ○はんだごては高温になります。火傷や火災の原因にもなり得ます。細心の注意を払って扱ってください。
 ○ニッパでリード線を切る時、切りカスが勢いよく飛び散ることがあります。目に刺さるなどの危険もあります。
  必ずゴーグルを付けて目を保護して作業してください。

さて、前置きというか、準備作業が長くなってしまいましたが、いよいよはんだ付けで回路を作って行きます。

・まずははんだごてを暖めます
こて台のスポンジに水を含ませておきます。はんだごては机などに直置きは絶対にしないで、必ずこて台の上に置きます。
(上の方の写真を見てね)
はんだごてのコードをコンセントに差し込んで、電源を入れます。
数分もするとヒーターが熱くなって、こて先ではんだが溶けるまでの温度になります。
電源を入れて直ぐにはんだ付けを始めたいかもしれませんが、コテ先の温度が低いとまともなはんだ付けはできません。
焦らず、十分に温まってから作業を始めましょう。


・最初にはんだ付けする部品を基板の所定の穴に挿し込みます
キットなどを組み立てる場合、位置を考えながらの作業ではありませんので、取り付けたときの高さが低くなる部品から
順番につけるとやりやすいのですが、ここでは基板の大きさや部品の位置を決めた順番に部品も取り付けて行きます。
まずはIC M34−2L のリード線を基板に差し込みます。向きや位置を何度も、シツコイ程に確認しましょう。
写真のように、銅箔が無いほうの面から差し込みます。
基板の裏から数mmのリード線が出る程度に押し込みましょう。



・基板を裏返して3本のリード線をはんだ付けします
はんだごての先を部品のリード線と基板の銅箔部分(”ランド”と言います)に当てて、1秒くらい暖めます。
そして、そこを狙って、はんだを当てると、はんだがスルスルッと溶けて、ランドに広がってリード線とランドとを接続するハズです。
が、最初はなかなか上手くできないかもしれません。何事も練習なので、イライラしたりしないでね。
上手にできれば、はんだがランド部分からリード線に綺麗につながる、ツヤツヤの山状になっています。



※基板がグラグラして作業しにくい時
今回は特に基板を小さく切ってしまいましたので、グラグラして作業しにくいと思います。
金欠病に冒されていなければ、スタンドからクリップを装着したアームが伸びている固定器具も市販されていますので
そのようなモノを使うのがよいでしょう。
が、私はお金がないので、いつも消しゴムなどを台にして、その上に基板を置いて作業しています。



・リード線の余った部分をニッパで切り取ります
リード線の余っている部分をそのままにしておくと、別の部分にショートしてしまうなど邪魔になるばかりなので
ニッパでパチン!と切り取ります。
ニッパの切れ味が良いほどリード線は勢いよく飛び散りますので、周囲に人がいないことを確認して、
必ずゴーグルで自分自身の目を保護して、作業しましょう。



・次の部品を基板にはんだ付けします
ここでは100Ωの抵抗を、先ほどと同様にはんだ付けします。



・M34−2Lと100Ωとの間を配線する
ここでICと100Ωとの間をスズメッキ線を使って配線します。
基板の裏と表を交互に見ながらの作業になりますので、頭の中でよく整理しながら作業します。
まずスズメッキ線の先端をはんだメッキします。こて先に細い(0.4mmくらい)スズメッキ線の先端をあてて暖めて、
そこにはんだを少しだけ流して、線の先端をはんだでコーティングしておきます。



ICの真ん中のピンのはんだのところに、スズメッキ線の先端を、はんだごての先で押し付けます。
するとはんだが溶けて、スズメッキ線の先端がはんだの山の中に埋もれますので、線を動かさないように注意しながら
こて先をそお〜っと外します。はんだが冷えれば、スズメッキ線が固定されます。



・スズメッキ線を曲げながら、抵抗への配線をつくる
先に描いた図を見ながらスズメッキ線を曲げて、100Ωへの配線を作ります。100Ωまでのびたら、
はんだ付けしたランドの上でスズメッキ線をニッパで切ります。



・抵抗にスズメッキ線をはんだ付けする
抵抗をはんだ付けした部分に、スズメッキ線の切った先端をこて先で押し付けると、はんだが溶けてスズメッキ線が中に入って行きます。
もしはんだがはじかれてしまう感じがしたら、少しだけはんだをたすと、中のフラックスの働きできれいにスズメッキ線にもはんだ付けできます。



一ページが随分と長くなってしまいましたので、今回はここまでです。(前回更新から間隔が開いてしまい、ごめんなさい)
次は、はんだの外し方や悪いはんだ付けの例、ランドが取れちゃった場合の対処なども含めて、回路が動くまで進めたいと思います。



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