0〜10V電源回路
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可変型レギュレータICのLM317Tは、ちょっとした実験用電源に便利なのですが、出力電圧が1.2Vまでしか下げられないのがちょっと残念ですね。ここでは0Vから可変できる簡単な電源回路を掲載してみます。
TL431を2.5Vの基準電源として、その電圧と回路の出力電圧とをオペアンプで比較して、(オペアンプから見て)同じ電圧になるように、トランジスタをドライブする・・・とこんな感じの回路です。(動作説明を端折りすぎかな?)
この回路の「入り口」側には13.8V(あるいは12V)の安定化電源を接続します。トランスにダイオードだけの(例えば車のバッテリー用の安価なバッテリーチャージャー)電源は使えません。
「出口側」からは、0〜10Vの電圧で最大1Aの電流を取り出すことができます。
ただし「入り口」側の電源に12Vを使用した場合、最大電圧は9V程度になります。
出力電圧の設定は10kΩ(Bカーブを使用します)の可変抵抗を使用しています。頻繁に変更しないならば半固定抵抗で良いでしょうし、頻繁に変更する場合は可変抵抗を使用してください。
トランジスタですが、2SC1815は小信号汎用NPNなら大抵OKです。2SD2012は、コレクタ電流を3A程度流せて放熱器に取り付けられる形で、かつコレクタ電流が1Aの時のhFEが100位あるものを使用します。
オペアンプは、単電源用で10V程度で動作するものならば回路自体は動作するのですが・・・例えばあまりに動作が「遅い」ものだと、急に負荷電流が変化した時などに出力電圧の制御が間に合わない現象が出たりします。かと言って贅沢を望めばキリがなくなりますので、ここではCA3140を使用しています。1−8ピンの1000pF(マイラコンデンサ)は位相補償用なので、使用するオペアンプによります。もし手持ちにICL7611などの「遅〜い」オペアンプがあれば、是非それを使ってこんな回路を組んで、出力電圧をテスター(できればアナログ)で観察しつつ、入出力の条件を急に変化させて見てください。面白い現象が見られますよ!
蛇足ながら、このように書くとすぐに「ICL7611」は悪いICなんだ!と勘違いする単純思考の方が現れて困るのですが
ICL7611はスピードは望めない代わりに、恐ろしく低消費電力で、とても優秀なヤツです。
回路中のR4は過電流保護用です。ここの電圧降下が0.6V以上となるとTr4をONにして2SD2012のベース電流を「横取り」してしまうため、出力電流が制限されます。ただし、この回路は定常的な過電流を保護できるものではありません。実験中一瞬だけショートさせちゃった!その程度の場合の保護用です。他の抵抗は1/4W炭素皮膜抵抗でOKですが、この部分だけは1Wの酸化金属皮膜抵抗を2本並列にして使用します。
2SD2012は発熱します。発熱量は(入力電圧(V)−出力電圧(V))×出力電流(A)です。例えば入力電圧が13.8V、出力電圧が5Vで1Aの電流を取り出したとすると
(13.8−5)×1=8.8W
の熱が発生して、放熱器無しではアッと言う間に発熱でトランジスタが壊れてしまいます。必ず放熱器(使用条件にもよりますが、大雑把には「ランチパック」くらいの体積)に取り付けてください。ケースに入れる場合には、ケース内に熱がこもらないように!あるいはアルミケースも放熱器の一部となるように工夫します。
念のため付け加えますが、この回路では昇圧はできません。3端子レギュレータやツェナーでも良くあるのですが「9Vの電圧が得られると言うことなので、電池1本をつなげてみたのだが9Vなんか出てこない!不良品だから交換しろ!」との理不尽なクレームに困らされることが多々あります。
「入り口」の電圧は「出口」の電圧より3V位は高い必要があります。この回路ではどこをどうしても出口側の電圧を入り口側より高くはできません。
もっと電流を多く取りたいとか、電圧の可変範囲を広くしたいとか、いろいろと要望はあるでしょうが、この回路では簡単な最低限の過電流保護以外全く保護回路はありませんので、この程度の電流電圧でとどめておくのが無難だと思います。「自己責任で作るから教えて!」と問い合わせをされても、仕様の変更についてお答えいたしませんので、悪しからずご了承ください。