ハンダ付けの予備知識〜ハンダ付けを始める前に・・・
最近は「ゆとり教育」の影響なのか、中学校でハンダ付けを経験しない方も多いらしくて
何のためにハンダ付けするのか?注意するべき事は何なのか?を知識として持っていらっしゃらない方も多いらしいです・・・
ここでは、まずはハンダ付けを始める前に最低限知っておいて欲しい事を説明いたします。
1.ハンダって何?
ハンダとは200℃前後の比較的低い温度(あくまで金属としては、です)で溶ける様に工夫された合金の一つです。
従来のハンダはスズ(40〜65%程度)と鉛との合金でしたが、最近は重金属で体に入れば有毒な鉛を使わない物も広く使われています。
電子工作用には、従来の鉛を含むタイプでは、スズが60%前後のタイプが使いやすいです。
板金用では、もう少し鉛が多く含まれているものを使うようです。
電子工作用のハンダは直径が0.3〜1.2mm位の糸状になっていて、マカロニよろしく中心には穴があいています。
穴は空洞と言うわけでなく、フラックス(あるいはヤニとかレジン)と呼ばれる樹脂状の物が入っています。
これは、ハンダが溶けた時に流れ出し、ハンダの流動性を良くしたり、ハンダ付けの対象物(プリント基板やリード線)の酸化皮膜を取って
ハンダ付けをしやすくするためのものです。
基本的には、プリント基板に塗ってあるフラックス(手で触ると少しベタつくのがそうです)と同じ物です。
板金用のハンダでは、板や棒状だったり、フラックスが入っていなくて、代わりに軟膏の様な「ペースト」を使用したりします。
ペーストも、働きとしては、電子工作用のハンダの中のヤニ(フラックス)と同じなのですが、電子工作では使用してはいけません。
ペーストを塗れば、よりハンダ付けしやすくなると思いがちですが、絶対にダメ!です。
何故ダメかと言うと、板金用のペーストは、ハンダ付けの後水洗いをして落す必要があるからで、
そのままではハンダ付けした場所が腐食してしまいます。
昔の、真空管時代の工作ならば、多少腐食しても物が大きいので大丈夫だったかもしれませんが、
現在のプリント基板を使用した工作では、せっかくの工作がボロボロになってしまいます。
鉛を含まない「鉛フリー」のハンダも広く出まわるようになりました。
以前はハンダ付けがし難い物でしたが、年々改善されているようです。
それでも、従来のハンダに比べれば、ハンダ付けのし易さは劣るようですので、なれないうちは従来からのタイプで工作したほうが良いと思います。
2.何故ハンダ付けするの?
ハンダ付けの目的は、部品同士あるいは部品と基板や部品と配線材とを、電気的にも機械的にも、しっかりと接続する事です。
電気的に付いていれば良いのでしたら、例えば線と線とをよじり合わせれば、とりあえず電気は流れます。
ですが、この状態では、ちょっと引っ張れば離れてしまい(つまり機械的に弱い)電気は流れなくなってしまいます。
ハンダという金属を溶かして、接続したい部分に流し込めば、線と線はしっかりと接続されて、ちょっと引っ張っても取れませんし
電気もより確実に流れます。
線と線との接続ならば「圧着」と言う方法もありますが
基板と部品のリード線との接続では、圧着はムリがありますし、よじり合わせるなんて事も出来ませんので、ハンダ付けは重要です。
まれに、基板と部品のリード線のハンダ付けで、基板には全くハンダがついていないでリード線の先っちょにマッチ棒みたいにハンダがついた状態で
「ハンダ付けはちゃんとした」と言われる事がありますが、上記のような状態では、基板とリード線が機械的にも電気的にも接続されていない
つまりはハンダ付けとしてはNGだと言う事は、お解りいただけると思います。
3.ハンダ付けできる物出来ない物
ハンダ付けは万能ではありません。接着剤にもくっつけられる物とダメな物があるように、ハンダ付けにも付けられるものとダメな物があります。
電子工作用のハンダで付けられる物は、「銅」や「スズ」「ニッケル」「真鍮」などです。
付けられない物は、「ステンレス」や「アルミ」、「チタン」などが代表です。
普通に電子工作をするのでしたら、とくに気にする必要はないのですが、ケース加工やアンテナの自作などを始めると
ステンレスやアルミをハンダ付けしたくなってきます。
(さすがにチタンを使いたい方は余り居ないと思いますが・・・メガネの修理はメガネ屋さんに任せましょう)
その場合にはステンレス用ハンダやアルミ用のハンダを使用する事となります。
電子工作としてのハンダ付けよりも、ちょっとウデが必要です。
ステンレス用のハンダはホームセンター等でもみかけますが(当店では扱っていません。ご了承下さい)
アルミ用は以前はみかけましたが、最近は見かけない様です。
4.道具など
ハンダは溶かして使うものですから、溶かすための道具、つまりハンダゴテはどうしても必要です。
また、コテを置くための台、汚れたコテ先を拭くための塗れたスポンジ、失敗した時などにハンダを除去する道具などが必要です。
詳しくは「工具箱」をご覧下さい。
5.注意すべき事
※高温注意!
ハンダコテの先は300℃位にまでなりますので、「火の元」としての注意が必要です。
ハンダゴテの電源を入れっぱなしにしておけば、火災の原因ともなり得ます。
また、コテ先だけでなく、ヒーターの部分やヒーターから手でもつ柄までの金属部分もコテ先同様高温になります。
柄の部分以外にウッカリふれたり、握ったりすると、確実に火傷します。
また、ハンダ付けしたばかりの個所も、当然ですが高温になっています。指先等火傷しないよう注意する必要があります。
※フラックスに注意!
ハンダゴテでハンダを溶かすと、中のヤニ(フラックス)や基板に塗ってあるフラックスが蒸発します。
これは、体には有害です。工場で製品を作るための作業をする場合、換気ダクトを配置して、作業者が吸い込まないようにします。
アマチュアの工作では、そこまで神経質になる必要は無いと思いますが、直接吸いこまないように注意してください。
直接吸いこんでしまうと、かなり「キツイ」です。
※鉛に注意!
先に書いたように、鉛は体に取りこまれると有毒です。
工作を楽しんだ後は、充分に手を洗ってください。
間違っても、ハンダやハンダゴテをなめたりしてはいけません。
小さなお子さんがいるご家庭では、部品などとともにハンダや工具類も、お子さんの手に触れないようにしてください。
※ 重 要 ※
ハンダ付けの際にもフラックスなどが飛び散る事がありますし、ハンダ付けした後余分なリード線を切り取る時には切った瞬間リード線が勢い良く飛びます。
コテ先やその他の工具類を不意に顔に突いてしまう事もあり得ます。
工作の際には、必ず、保護用のメガネを着用すること。
(保護用のメガネは、ホームセンターなどで数百〜三千円位で入手できます)
6.使ってはいけないもの
※板金用ペースト
板金用ペーストを基板や電子部品に使ってしまうと、部品や基板を腐食してしまい、いずれダメにしてしまいます。
板金をハンダ付けするときに使う場合でも、ハンダ付けの後よ〜く洗う必要があるものです。
電子部品をハンダ付けした後洗いますか?水道水で洗うのだって、場合によっては致命傷になる電子部品です。
(メーカーなどでの洗浄工程では、不純物や組成など厳重に管理された洗浄液を使用します)
デリケートな電子部品に、板金用のペーストは絶対に使わないでください!
※ステンレス用フラックス、アルミハンダ用フラックス
ハンダ付けしにくいステンレスとかアルミがハンダ付けできるようになるのならば、電子部品に使えば最強じゃね?と思うのか
ステンレス用やアルミ用のフラックスをプリント基板に塗ってハンダ付けする例もあるようですが、絶対にダメ!です。
板金用ペースト以上に腐食性が強いので(”錆びない金属”表面の、やたら強固な不動態皮膜を取り去ってしまうのですよ!)
基板や電子部品を表面だけでなく、その内部までどんどんダメにしてしまいます。
こんなもの電子部品のハンダ付けに使ったって百害あっって一利なし!(だいたい高価だし)
それよりはハンダ付けのコツを早く身に着けましょう。
大雑把に「まずは注意すべき点」を書いてみましたが、結構な分量になってしまいました。
ウンザリしている方もいるかもしれませんが、何事も慣れが肝腎です。
お箸の使い方だって、文章にして説明してみれば、トンデモナイ分量になってしまうでしょう?(試しにやってみると面白いと思います)
お箸だって自転車だって、慣れれば体が自然に動くのと同じで、ハンダ付けも、失敗したり成功したりを繰り返しながら慣れるのが大切です。